研究テーマ

今日の計算機をはじめとする情報機器や情報システムのハードウェアは集積回路によって実現されており,各種情報機器の高性能化,低コスト化,小型化,低消費電力化のためには,集積回路の進歩が欠かせません.集積システム研究室では,主に集積回路上に構成されるシステムを対象とし,具体的な応用を視野に入れた「ものづくり」を研究しています.

柔軟なハードウェア

通常の集積回路は工場出荷以後に機能を変更できません.汎用プロセッサやメモリなど,需要の高い集積回路は量産の恩恵を受けることができますが,特定用途向け集積回路(ASIC)はコストがかさみます.そこで多様な用途を柔軟にカバーできる集積回路として,工場出荷後にユーザーが機能を変更できる再構成可能デバイスが誕生しました.

集積システム研究室では,フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)に代表される再構成可能デバイスのアーキテクチャ,設計ツール,応用技術などを研究しています.特に,新しいナノデバイス(原子移動型スイッチ)を導入した再構成可能デバイス(ビアスイッチFPGA)について,企業や他大学とも共同研究を行っています.

テーマ例

  • 高性能,低コスト,低消費エネルギーな再構成可能アーキテクチャ
  • 再構成可能アーキテクチャのための論理合成,配置,配線等の設計自動化のためのツール(プログラム)の開発
  • 再構成可能アーキテクチャの性能を最大限に引き出すハードウェアアルゴリズム
AP
ビアスイッチFPGAのアーキテクチャ(水色は配線層中のクロスバとロジックブロック,赤はトランジスタ層上の算術演算ブロック) Analytical Placementによる自動配置の過程 自動配線の結果(灰色は利用可能な配線資源,赤は接続に使用された配線経路)

エナジーハーベスティングと超低消費電力集積回路

携帯電話やタブレット端末,ゲーム機などの携帯情報機器にはバッテリーが内蔵されており,長時間動作のためには消費電力を極限まで低減する必要があります.また近年,環境エネルギーから電力を獲得して活用するエナジーハーベスティングが注目されており,小型情報機器を半永久的に動作させるマイクロエナジーハーベスティングも研究されています.例えば集積回路チップ上に 1mm2 の太陽電池を実装すれば,25,000ルクスの直射日光で150μW程度の発電ができます.

集積システム研究室では,オンチップ太陽電池で得られるわずかなエネルギーで半永久的に動作可能な「自給自足集積回路」についてユニークな研究をしています.

テーマ例

  • オンチップ太陽電池の電力を活用する昇圧回路
  • 超低消費電力,低コストな不揮発性メモリ素子
  • 超低電圧で動作可能な各種センサ
試作した2.5mm×2.5mmの集積回路チップ(左は百円玉) オンチップ太陽電池の性能測定(直射日光相当の25klxを照射) 不揮発性メモリに使うFiCC (Fishbone-in-Cage Capacitor)